SONY VAIO PCG-QR1S/BP(MODEL PCG-731N)
症状は電源が入りません。
この機種ではポピュラーなトラブルです。
どうやらハードウェアの不具合を検出するとCMOSにその情報が記録され、BIOSが起動しなくなるという仕様らしいのですが、単にCMOSバックアッ プ・バッテリが消耗しただけでも、起動しなくなることもあるようです。そのため、しばらく使わなかっただけでまったく起動しなくなるケースもあります。
このマシンもそんな感じですが、まずは背面のリセットスイッチを押して起動してみると、難なく起動してしまいました。
と、ここまではよかったのですが、やっかいなのはこれからでした。
起動後1.5~2時間経過すると、突然電源が落ちます。
いったんこうして電源が切れると、その後電源ボタンを押してもまったく起動しません。LEDさえ点灯しない状態で、最初の症状に戻りました。
今度はリセットスイッチを押しただけでは起動しません。
まずメイン・バッテリを外し、底面を開けて、バックアップ・バッテリのコネクタを外してCMOSを消去すると電源が入りました。
しかし、やはり短時間で突然電源が切れます。
CMOSを消去すると(バックアップ・バッテリを外す)、すぐに電源が入るようになりましたが、またすぐ電源が落ちます。1日ほど放って置くと2時間近く動くことが分かりました。
念のため、バックアップ・バッテリ交換したり、BIOSのアップデートもしてみましたが効果はありませんでした。
症状から推察するとCPUの熱暴走に似ていますが、CPU周辺はまったく異常はみられませんでしたが、マザーボード上に1か所、かなり高温な熱源を見つけました。
3.3Vや5Vなどを供給するためのスイッチング・レギュレータ基板のようです。
マザーボードにコネクタ接続されていて、簡単に取り外すことができます。
保護用の黒いウレタン・フォームを外すと、Linear Technologyのスイッチング・レギュレータが現れました。写真では見づらいですが型名はLTC1628CG↓
LTC1628(Linear Technologyのサイトから)
データシートを見ると動作温度は85℃とありますので相当高温になっても大丈夫なはずです。温度は測定できませんでしたので今ひとつ根拠に欠けますが、このスイッチング・レギュレータが怪しい!と勝手に思い込み、まずはヒートシンクを手作りしてみました。
白く見えるのシリコングリスで、ヒートシンクは底面金属カバーに密着するようにして排熱効果を高める工夫としてみました。
しかしながらこれでも効果はなく、やはり2時間ほどで電源が突然落ちます。
うーん、残念。
おそらくレギュレータ本体ではなく、周辺のチップコンデンサ等なのでしょう。ここまでかと思い諦めかけましたが、ACアダプタからの電圧が直接スイッチン グ・レギュレータに入力されているので、ACアダプタの電圧を少し下げてみると負荷が減り、改善するんじゃないかと考えました。
VAIO純正ACアダプタ(写真:左)の定格出力は19.5Vですが、実測してみると19.8V。許容範囲です。
しかし、これをあえて少し落としてみることにしました。Toshibaの古いラップトップPC用(写真:右)ですが、手ごろな電圧のACアダプタがありました。
18Vと書いてあり、実測でも17.9Vでした。
このままではPC側のプラグの形状が違いますので、プラグを交換してテストしてみると、まずは起動OK。18Vでも動くことを確認。メインバッテリもちゃんと充電されています。
電源を入れて、ある程度CPUに負荷をかけたまま放って置くと
2時間後…お!落ちないぞ。
3時間後もOK。結局9時間以上連続稼動したところでOKと判断。
どうやらスイッチング・レギュレータICの不具合のようですので、修理には部品交換が必要ですが、今回はお客様のPCではありませんでのこれで良しとします。しかし、この状態で今は動いていても、そのうち完全に逝っちゃうことでしょう。
今回は修理とは言えませんが、同じようなトラブルに悩んでいる人の参考になれば幸いです。ただし自分で改造・修理する場合は自己責任ということをお忘れなく。